産業看護師とは
産業看護師の主な仕事内容と役割
看護師の活躍する場は、病院などの医療機関だけではなく、学校や企業など様々なところにあります。その中でも、一般企業で働く看護師(保健師)を「産業看護師(産業保健師)」と呼びます。
産業看護師とは、その企業で働いている社員さん達の健康を守るために従事している看護師(保健師)のことで、病気を抱える患者さんへの看護・ケアが求められる医療機関とは異なり、各企業で働く社員さん達を対象としたケアが主な業務内容になります。
基本的には、一般企業に設置さている医務室や健康管理室に勤務し、生活習慣病の予防、健康診断の記録・管理や社員さんからの健康相談の受け付け、労災関係の対応など、企業に勤務する社員さん達の健康管理を担います。
また、健康相談業務や健康管理・増進業務以外にも、生活習慣病の予防対策やメンタルヘルスサポート、健康診断の受診率の向上対策、日々の健康を保つための病気の予防対策など仕事・役割は多岐に渡ります。
産業看護師の新しい役割
近年では、長引く不況や忙しい毎日の生活でのストレスなどから、身体面での不調や精神面での病を抱える社員さんが各企業で増加してきています。中には、うつ病などの精神疾患を抱え悩んでいる人も少なくないのです。
そのようなメンタル面での悩みを抱えている社員さんに対して、相談に乗ったりアドバイスをしたりなど、メンタル的なケアを行うのも産業看護師のとても重要な大切な業務のひとつになってきています。
誰にも相談できず、一人で悩みを抱え込んでしまったり、小さな悩みから心の病へと繋がってしまったり…このようなことから仕事を続けることが困難になることや命を落としてしまうという悲しい事例も少なくないのです。自発的な相談だけではなく、周りからの相談(最近部下の様子が気になる…など)の受け付けや情報収集、そこからの働きかけなども必要です。
そして、「相談してください!」というばかりでは、このようなことはただでさえ他人には話しにくいことだと思うので、相談しやすい環境作り、社員さんとの信頼関係の築きも大切ですね。
企業勤務と病院勤務の違い
新卒で看護師になった方にとっては、あまり社会に出たという気分を味わえないでいる方も少なくないのではないでしょうか。産業看護師はそれとは逆に社会で働く感覚を大いに味わうことができます。
OLのようにスーツを着て、会社に出勤。ランチは勿論、ネイルも可能なところも少なくないです。
仕事内容としては、人々の健康を守りケアをするという観点は同じですが、医療機関で働く看護師の業務とは同じ看護師でもかなりのギャップはあるかと思います。しかし、仕事内容にも社会で働くという責任感も芽生えてくるはずです。
例えば、病気の早期発見、早期対応というのはその人の今後が左右されるといっても過言ではないくらい重要なポイントですが、ここで産業看護師がしっかり仕事をこなすことで、相談・予防対策から始まる早期発見、早期対応が各企業ごとにできるようになり、社員さんみんなが生き生きと元気に健康で働ける会社が増えていくことになります。
このように、日本の経済を支える人々が健康に働くことができるようサポートをする産業看護師は、社会の縁の下の力持ちと言えるかもしれません。
病気の早期発見から考える産業看護師のやりがいと難しさ
健康に元気に毎日働けるためには、身体も心も健康でなくてはなくてはなりません。身体や心のことで悩みや不安があっても、「忙しくて中々医療機関に行くことができず、ついつい目を逸らしがち…」「こんなことで医療機関を受診するなんて…」「そのうち解決できるろう」というように思っている方はたくさんいるように思います。周りが気付いてあげるというのも簡単なようでなかなか…実際には難しいですよね。
人は、身体や心の悩みがあるとき、少しでも気付いてもらえたり、誰かに相談できることで対処の糸口が見つかるものです。対処の糸口が見つかると、それまで悩んでいたのが嘘のように、あっという間に解決に繋がったり、心が楽になったりしますよね。
最初は少しの、小さな悩みや不安、不調でも、後回しにして目を逸らしてしまっている間に自分では想像もしていなかった大きな病へと繋がってしまうこともあります。そうならないためにも、身近にいる産業看護師が普段から相談しやすい環境を作り、社員さんと密着しながら健康管理・増進やメンタルヘルスサポートをしていくことが重要です。これはこの仕事のやりがいでもあり、難しさでもあると言えるのではないでしょうか。